愛隣だより☆12月巻頭言☆
2020年3月31日 投稿者:愛隣幼稚園
11月5日から仮園舎増築工事が始まりました。大型重機が園庭に運び込まれ、先端に付けられた大きな鋏によって樹木が次々と切り倒されていきました。初めは興味深く見つめていた私ですが、土混じりの根っこの匂いが辺りに充満していることに気づいた時、申し訳ないという思いに駆られました。直木賞作家、恩田陸氏の『蜂蜜と遠雷』で、「活け花って矛盾してますよね。・・・自然界の中にあるものを切り取ったり、折ったりして、生きているかのように見せる」との問いに答えて、「だけど、そもそも我々は何かを殺生しなくては生きていけないという矛盾した存在なんだ。我々の生存の基本となる食べること自体がそうだろう。食べるという行為の楽しさは、罪深さと紙一重だ」という一文を思い出します。園庭の樹木の多くが40年以上、暑さ寒さに負けずに、生息するための営みを繰り返してきました。この時期、植物は葉を落としますが、それは動物の冬眠と同
じで、冬を乗り越えるための手段です。それだけではありません。そこに多くの虫や鳥を宿し、命を守り、育んできたに違いないのです。月主題は「喜ぶ」ですが、私たちの喜びや楽しさは、実は罪と深く関わっていて、他の誰かの犠牲の上に成り立っているのかもしれません。
着工から20日ほどで仮園舎の外観が整いました。仮園舎とは言え、安全基準に適合した建築物です。工事の大半を基礎工事に費やしましたが、施工者の話では、コンクリートが固まるまでかなりの時間を要し、時間の経過と共に強度が増すとのことでした。建物も植物も子育ても通ずるものがあるように思います。しかし、植物が日照時間の短い冬に太陽の光を十分に受けられず葉を落とすのとは異なり、子育ては愛情を注ぎ続けることが出来ます。献身的な愛こそ人格形成の基礎を培う幼児期に必要なものです。クリスマスはその愛を取り戻す季節なのです。(園長)