愛隣だより☆3月巻頭言☆
2020年3月31日 投稿者:愛隣幼稚園
今年に入り、大分いのちの電話の自殺対策講演会に出かけました。同団体は24時間365日体制で、SNSではなく声と声の繋がりを大切に、生きる希望を失った方々の相談を受けるボランティアによって成り立っています。昨年の自殺者が統計開始以来初の2万人を割り、10年連続で減少している背景に、こうした尊い働きがあることを思います。講師の一人、夏苅郁子氏の講演に衝撃を受けました。なぜなら今は児童精神科医である彼女自身が、かつては精神科の患者であったことを自らの不幸な生い立ちを含めて包み隠さず語られたからです。重い精神の病気になった母親に育てられ、自身も青春期に精神科の患者となり、父母を殺したいと思うようになり、常にカバンに刃物を入れて歩いていたこと。結局、親を殺すことが出来ず、その刃は自分に向けられ、二度の自殺を図ったこと。しかし「助かって良かった」とは思えず、周囲の人々の日常を狂わせてしまった罪悪感から三度目の自殺を図ることが出来ず、腑抜けのような状態で何年も過ごされたこと。今日、考えられない犯罪があちこちで起きていますが、それは刃物が自分に向くか他人に向くかの違いで、自殺と殺人は紙一重だと。そんな中で彼女を回復へと導いたものは、「薬」ではなく「人」だったというのです。これが医者の言葉であることに深く考えさせられました(夏苅氏の著書『人は、人を浴びて人になる』を読んでみてください)。
子育てにも特効「薬」はありません。日々、愛のある言葉を浴びせられ、あたたかな関係の中でこそ、人は自分が「かけがえのない」(月主題)存在であることを認め、生きる力を与えられていくのではないでしょうか。今年度もそのような出会いと交わりを与えられ、ありがとうございました。 (園長)