愛隣幼稚園

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愛隣だより☆2021年6月巻頭言

「はらぺこあおむし」で知られる米国の絵本作家エリック・カールさんが91歳で亡くなりました。大型絵本にくり抜かれた食べ物の穴から、あおむしのぬいぐるみがニョロニョロと姿を現す様に、目を輝かせながら見つめていた子どもたちの表情が忘れられません。それにしても、あの色彩豊かな絵本はどのようにして生まれたのでしょうか。ある意味では、時代が彼を生んだと言ってよいかもしれません。彼の生まれた年は世界恐慌が起きた年であり、6歳で移住したドイツにはヒトラーが台頭していました。まさに暗黒の時代です。そして第二次大戦の空襲を避けるために街中から「色」が消されていく中で、ある時彼は、一人の大人からこっそり色彩豊かな絵を見せられ、その美しさに魅了されたことがその後の彼の人生を変えていったということでした。

この話を聞いて、私はドイツのフレーベルを思い起こしました。フレーベルの幼稚園は、ドイツの国力増強の教育が求められる中で、その真逆の、国益を損なうもののように思われ、禁止されるということがありました。しかし、その後、彼の思想は北欧で理解され、やがて世界中に広がり、幼稚園の創始者と呼ばれるようになりました。考えて見ると、キリスト教保育は、その時代の社会のあり方と、そこで育つ子どもや家庭の課題に寄り添うことを大事にする歴史を刻んできたことを思わされます。

感染症が拡大し、あらゆる事柄に制限が加えられている今日、何よりも子どもの権利を護ることができるかが問われています。子どもが「やってみたい」(月主題)と思えるような環境をいかに保障し、子どもの秘められた力を引き出すことができるか、私たちの責任は重大です。あおむしがいろんなものを吸収して色鮮やかな蝶になるように、子どもの豊かな成長を祈りながら。(園長)